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福岡空港から鹿児島へ――父を亡くして気づいた、帰省レンタカーの選び方

東京に住んで、もう30年以上になる。

鹿児島を出たのは大学進学がきっかけで、そのまま就職して、結婚して、子どもが生まれて。気づけば58歳になっていた。年に一度か二度、盆と正月に帰省するくらいで、それで十分だと思っていた。鹿児島には母がいる。元気な母が。

でも去年の秋、父が逝った。

急なことではなかった。数年前から体が弱っていたし、覚悟はしていたつもりだった。それでも、いざ電話が鳴ったとき、「つもり」でしかなかったことを思い知らされた。

葬儀を終えて東京に戻ったあと、すぐに現実が押し寄せてきた。相続手続き。実家の整理。そして何より、一人になった母のこと。弟は福岡にいるが、長男の自分がもっと頻繁に顔を出さなければという気持ちは、正直なところ義務感というより、ただ会いたいという気持ちに近かった。

こうして、東京―鹿児島を「定期的に往復する生活」が始まった。

問題は、交通費だった

新幹線と高速バスを乗り継ぐのが最安に見えたが、鹿児島市内だけでなく、郊外の法務局や母の病院、田舎の親戚の家を回ることを考えると、車がないと話にならない。

飛行機は福岡空港が便利だ。東京からのLCC便を使えば費用はある程度抑えられる。問題はその先だった。福岡から鹿児島まで、レンタカーで移動する。今回は相続関係の手続きが複数あり、1週間ほど滞在が必要だった。

正直に言うと、最初はレンタカー代をなめていた。

「1週間くらい、そんなにしないだろう」

甘かった。大手レンタカー会社のサイトをいくつか見て、目が点になった。コンパクトカーでも1週間借りると、軽く3〜4万円を超えてくる。飛行機代と合わせると、帰省のたびに5〜6万円が飛んでいく計算だ。年に3〜4回帰省するとなれば、年間20万円以上。営業部長という肩書きはあっても、子どもが2人大学・高校と進学盛りの今、その出費は正直きつい。

何とかならないか、とスマホを開いた。

InstagramもXも見てみたが、旅行系の投稿はあっても「コスパ重視の帰省レンタカー」という切り口の情報はほとんどなかった。みんな観光の話をしていて、自分の状況とはちょっと違う。

Googleで「格安レンタカー 長期 福岡空港」と検索してみると、いくつかの格安系レンタカー会社が出てきた。ニコニコレンタカー、ガッツレンタカー、そして業務レンタカーという名前のサービスが目に入った。

業務レンタカー? 聞き慣れない名前だった。法人向けか何かかな、と思いながらサイトを開いてみると、個人でも普通に使えるサービスだとわかった。そしてページをスクロールしていくうちに、目が止まった。

1週間(7日)のレンタル料金が、他社と比べてかなり安い。

いくつかのサービスを同じ条件で比較してみた。車種はコンパクトカー、福岡空港店で借りて同じ場所に返す、7日間で。

大手の有名どころは軒並み3万円台後半から4万円台。格安系と言われているところでも、2万5千円〜3万円前後が多かった。

業務レンタカーは、その中でもさらに一段安かった。

長期になればなるほど、1日あたりの単価が下がっていくという料金体系が、週単位・月単位で帰省する自分のニーズにぴったり合っていた。「業務用」と名がつくだけあって、長く使うほど割安になる構造になっているのだろう。短期の観光客より、長期で使うユーザーのことを考えて設計されているのだと感じた。

それに、福岡空港から近い。これは地味に大事なポイントだ。公共交通で乗り継いでレンタカー店に向かうのは、正直面倒だし時間もかかる。空港直結に近い利便性があるのは、体力的にも助かった。

予約はWebからサクッと完了した。操作が複雑でもなく、必要事項を入力してオプションを選んで、確認メールが来て終わり。このあたりのシンプルさも好感が持てた。

当日、福岡空港に降り立ったのは平日の午前中だった。店舗のスタッフは感じよく対応してくれて、手続きもスムーズだった。車はきちんと清掃されていて、特に不満はなかった。格安だからといって雑な対応をされるわけでもなく、普通に、ちゃんとしていた。それで十分だ。

車を走らせ、九州自動車道を南下する。

鹿児島まで高速を使って3時間ほど。この道を走るのは何十回になるだろう。子どものころは父の運転する後部座席から眺めていた景色を、今は自分がハンドルを握って見ている。不思議な気持ちになる。

法務局、銀行、税理士の事務所、母の通う病院、そして親戚の家。あちこちを車で回った。公共交通機関ではこうはいかない。車があることで、動ける範囲がまったく違う。

母は思ったより元気だった。でも、やっぱり一人は寂しいのだろう。夕飯を一緒に食べながら、父の話をたくさんした。こういう時間は、「帰省した」という実感をくれる。

相続の手続きは、予想以上に時間がかかった。書類をそろえ、確認して、また書類が必要になって。1週間ではすべては終わらなかったが、大きな山は越えることができた。次の帰省でもう一度来る必要がある。そのときもまた、業務レンタカーを使おうと思っている。

58歳になって、改めて思う。出費をゼロにすることはできない。でも、賢く選べばコストは下げられる。

交通費の見直しというと、飛行機のマイルや早割に目が向きがちだが、レンタカー代もバカにならない。特に長期で借りる場合は、1日あたりの単価が大きく変わってくる。大手の安心感も悪くはないが、今の自分には「必要十分なサービスを、必要以上に払わず使う」という考え方の方が合っている。

業務レンタカーは、その点でとても理にかなっていた。長く借りるほど割安で、空港アクセスがよく、手続きが簡単。観光目的ではなく、実家の用事を淡々とこなすための帰省には、むしろこれくらいシンプルな方が使いやすい。

これから先、何年続くかわからないが、定期的に鹿児島に通う生活はしばらく続くだろう。その度に賢く選択して、無駄な出費を抑えながら、母との時間をちゃんと確保していきたい。

父が残してくれたものは、財産だけじゃない。「ちゃんと帰ってこい」という、言葉にならないメッセージも、残してくれたような気がしている。

福岡空港から鹿児島へ――父を亡くして気づいた、帰省レンタカーの選び方
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